美輪明宏の音楽会がオススメされていたので行ってきた
幕開け
情緒的な音楽と共に幕が上がり、あの人が眼前に現れた。
コンサート中は基本的に真っ暗で、自分の手元が微かに見える程度だ。そんな中ステージだけが照らされているので、じっと見ていると没入していく感じがする。すると、時代の感覚が一瞬飛ぶことがあった。
「今日はそんな(きな臭い)事は忘れて、戦争前の世界をお届けしたいと思います」というようなことを言っていたので、その通りだ。使われているセットは綺麗で、ボロくはない。しかし、「古い、昔っぽい」と思わせる作りになっている。そういうのも心に影響を与えている。
正直、歌は微妙。でも、MCは凄い
MCが上手かった。
歌われる曲のほとんどは自身が作曲した物。なので、本人の口から作曲したときの背景が語られるわけだ。それが随分前の曲なので、非日常感のある話は新鮮だ。それによって、ただ歌うよりその曲の価値や面白みが上がる。
最早、歌はいらない
ほとんどが愛の歌で、その歌が作られた背景が良い。例えば、目撃した男女の不倫。例えば、知り合いの男女の別れ。当然、要約してしまえばなんてことのない感じになってしまうが、実際はその時代の色と相まって良い感じだ。
昔の美輪さん「追っちゃだめよ。男に追わせなさい。そうすれば、『凄い女を逃がしてしまったんじゃないか』って思うから」
男運の悪い友人女性「私出来ない!」
昔の美輪さん「はねつけるのよ! 男が来たら、この歌を歌ってやりなさい」
「そうして作ったのがこの曲です」
鳥肌が立った。歌が始まるまで、イントロ部分が自分の中のピークだった。もう、その事実だけでよかった。「そんなこんなでこういう歌を作りました(ドーン!)」という事実だけで。
自分の作品を他人に楽しんでもらうには
「自分の世界に引き込むこと」
これが大事だと思った。説法や昔話、笑い話、色々な様相を呈した「曲紹介」。この曲紹介を通して、観客の周りに当時の世界を積み上げていく。自分が目にした世界に引き込んでいく。それが終わったところで歌に入る。効果的。自分の作品は自分が一番楽しめる。だから、自分と同じ感じにすれば楽しんでもらえる。なるほど。
(2016年7月2日)